最初の一口じゃ、人はまだ判断していない。
「また来たくなる味って、最初の一口で決まるんですか?」
そんな風に聞かれることがある。
たしかに最初の一口は大事だ。
でも、最初で勝っても、最後で忘れられたら意味がない。
リピートにつながるのは、最初の驚きじゃなく、最後の記憶だ。
“うまい”だけで帰らせるな。
「うまい」で終わった店は、他にもある。
じゃあなんであの店を選んだのか?と聞かれたとき、
「なんか、また行きたくなるんだよね」って言われる店。
それが、プレファレンス(選ばれる好意)が働いている状態だ。
感情は、味のあとに動く。
地獄の担担麺で言えば──
- 最初の一口は「うわ、辛っ!」
- 中盤は「慣れてきたかも」「でも汗が止まらん」
- ラストに雑炊を入れて、「……これは、反則だわ」
このストーリー構造(ナラティブ設計)が“また来たい”をつくってる。
味は記憶に残らない。感情の流れが、記憶をつくる。
“味以外”のところに、また来たくなる理由がある。
接客、言葉、店の雰囲気、貼ってある紙、椅子の距離感。
こういうタッチポイント(接点)の積み重ねで、人は「好きかどうか」を決めてる。
たとえば、
- 辛くても「食べやすい丼の形」
- 気兼ねなく使えるボックスティッシュがある
- 水がセルフでも「ちゃんと冷えてる」
こういうノイズのない体験が、「また行きたい」の下支えになっている。
「また来たい」は、終盤に生まれる。
うまいラーメンを作っても、それで終わりじゃない。
“うまかった”で終わらせると、“また来よう”は生まれない。
うまかった+気持ちよかった+なんかいい、まで届けて、やっと記憶になる。
だから、最初の一口に頼るな。
「また来たい」は、いつも最後に生まれる。